航空貨物シリーズを久し振りに再開します。
前回5回お送りした航空貨物編の続きです。
航空貨物の優位性は何と言っても、輸送時間の早さでしょう。
海上輸送で船のスピードは、昔も今もさほど変わらず、例えば日米間で10日ほどです。ヨーロッパになると、40日かかる場合があります。
これに比較して、航空機であれば、それぞれ10数時間の飛行時間で到着となりますので、その前後の通関にかかる時間や荷さばき時間を含めても船よりずっと早い輸送が可能です。
生鮮品など賞味・消費期限のあるものや、製造してすぐに販売してしまいたい物などは航空機の輸送に適しています。
医薬品、食料品や動植物も航空貨物に向いています。
また、海上輸送に比べて比較的荷役が単純なので、貨物への衝撃等のダメージは少ない方であると言えます。
日本が誇る、世界で使用される工業製品で、航空貨物が優位な商品を挙げてみます。それは、半導体製造装置で通称「ステッパー」と言われる機械です。
これなどは、機械の構造上、製造過程から衝撃は厳禁です。
衝撃受容Gは3G未満(1.5cmの高さからの落下不可)という厳しいものです。
貨物への衝撃や傾斜を嫌う荷主は、貨物にショック
ウォッチやティルト ウォッチという検出装置を装着して、ハンドリングの精度向上に役立てています。
その中でも、特に精度の高いハンドリングを必要とする貨物へはMAG2000(まぐにせん)なるショックウォッチを装着します。
この装置は、0.5Gからの衝撃を感知することのできる検知装置で、これが装着されているというだけで、相当神経の使う貨物ハンドリングを必要とします。
ハンドリングする場合のフォークリフトの運転速度を8km/hに制限したり荷物を載せる爪の角度を水平にして、極限まで衝撃を起こさない工夫をします。
また、空港内で貨物の動線上の路面を全て確認して、凹凸がないかも調べます。
半導体製造装置は、その大きさからジャンボフレーターでしか輸送できず、荷主からお墨付きを得たエアラインは数社しかありません。
日本のエアラインでは唯一ジャンボフレーターを持つ、NCA日本貨物航空にだけに許された特別な輸送なのです。