
ANAの国際線フラッグシップ機ボーイング777-300ER
国際線好調で両社とも増収、JALは増益・ANAは減益に
2025年3月期の連結決算において、ANAホールディングス(以下ANA)と日本航空(以下JAL)は、いずれも訪日外国人の増加をなど背景に国際線収入が伸び、好調な業績を記録しました。売上高はANAが前年比10.0%増の2兆2,618億円、JALが同11.6%増の1兆8,440億円となりました。

JALの国際線フラッグシップはエアバスA350-1000です
売上規模ではANAがJALを約1.23倍上回っていますが、最終利益は明暗が分かれました。ANAは、運航規模の拡大に伴う整備機会の増加や人財への投資の影響で前年比2.6%減の1,530億円にとどまった一方、JALは前年比12.0%増の1,070億円と、コロナ禍後で初の1,000億円台回復となりました。それでも、最終利益でANAはJALの1.43倍です。

ANA・JALの2025年決算短信から筆者作成 ※ANA機材数は決算説明会資料から抜粋
利用率ではJALがリード、RPKではANAが優勢
輸送力の指標である有償旅客キロ(RPK)は、ANAが810億人キロ、JALが690億人キロで、ANAはJALの約1.16倍に相当します。一方で座席利用率(Load Factor)ではANAが77.3%、JALが81.8%と、JALが4.5ポイント高い結果となりました。ANAは、JAL以上に新規路線を増やし、提供座席数が上がったことからL/Fが下がったことも影響しています。

JALのエアバス A350-1000型機
貨物とLCC分野での差も明確に
貨物輸送量では、ANAが38億トンキロ、JALが30億トンキロで、ANAはJALの約1.26倍の実績です。引き続きANAは貨物分野でも優位を維持しています。今期ANAは、NCA(日本貨物航空)を傘下に持つことで貨物分野では大きく連結業績を伸ばす可能性が高くなっています。
LCC(格安航空会社)に目を向けると、ANAはPeachとAirJapan、JALはZIPAIRとSpringを連結業績に入れて発表しています。Peachの収入は1,393億円(前年比1%増)、AirJapanは117億円(前年比904%増)となり、AirJapanが本格的に事業を拡大させたことが伺えます。
しかしながら、これまでのPeachの収入の伸長に比べ、今期の伸び率が頭打ちになっているところが気になります。JALは国際線の収入が855億円(前年比38%増)、国内線は33億円(前年比35%減)となっています。
JALは前期と変えてLCC2社の収入を非開示にし、国際線と国内線の発表に留まる為、正確な比較はできませんが、Spring Japanの回復と、ZIPAIR の伸長の著しいことがわかります。
LCCの輸送力(RPK)では、Peachは107億人キロ、ZIPAIRは77億人キロで、ZIPAIR は既にPeachの72%の輸送力を持っていることがわかります。

2025年では大人しい決算の数値に落ち着いたピーチアビエーション
来期はANAが減益予想、JALは2兆円規模に挑戦
2026年3月期の業績予想では、ANAは景気の緩やかな回復で売上高2兆3,700億円と増収を見込みつつも、国際情勢の不安定さで営業利益は押し下げられる見通しです。一方、JALは売上高1兆9,770億円と、経営破綻前の2兆円台に迫る水準を掲げ、「高い目標だが必ず達成できる」と社長が意欲を見せています。
まとめ
ANAはJALと比較して多くの項目で1.2倍規模にて推移しています。世界情勢は不安定なものの、大阪・関西万博の開催で、国内需要だけでなく、訪日需要の旺盛さが続き、引き続きの好業績が期待できます。