
写真展の案内はがきも秀逸 小沼成彦さんの作品
東京・銀座の富士フォトギャラリー銀座で開催されている、第3回ヒコシャメデル写真展「オレンジ&ゴールド」を訪れました。会期は2026年9月18日から24日まで。航空写真家のルーク・オザワ氏がテーマ監修する「飛行機の写真を愛でる」という言葉をルーツに持つヒコシャメデルですが、会場に並ぶ作品を見ていると、新たな航空写真の可能性が見えてくるようです。

塚原 徹さんの作品は羽田空港夜の情景 動きの遅い飛行機のスローシャッターは難しいらしい
テーマは「オレンジ&ゴールド」。夕陽や朝陽、空港灯火、建物、花、海、さまざまな「オレンジ」と「ゴールド」の中に旅客機が溶け込み、冷たい質感の飛行機に温かみが感じられます。

川田晃志さんの写真は明るく華やかで女子力が高い作品とご自分でも仰る
飛行機は主役でなくても、確かにそこにいる
今回の展示では、飛行機が写真の中心にいる作品は少数です。
夕焼けに染まる空の片隅に小さく浮かぶ機影、海面に延びる光の中を進む飛行機、鮮やかな花の向こうからアプローチしてくる機体、巨大な建造物や街並みの中に点のように写る飛行機――。一歩離れて作品を見ると風景写真のようでありながら、近づいてみると、そこにはきちんと飛行機が存在しています。

岡田雅典さんの羽田のきらめきを捉えた作品に活力が生まれる
飛行機そのものを記録するのではなく、「飛行機のある時間」や「飛行機のある風景」を切り取る。そんなアプローチが、この写真展の大きな魅力でしょう。
飛行機は高速で移動する被写体であり、太陽や雲、光の状態も刻々と変わります。その両者が理想的な位置で重なるのは一瞬です。作品の前に立つと、シャッターを切ったほんの刹那にどのような時間が流れていたのかまで想像したくなります。

松尾省吾さんの作品は水滴の中の奇跡を追ったもの そういう撮り方があったのか・・
「同じテーマ」でありながら、表現はまったく違う
写真展のおもしろさは、同じ「オレンジ&ゴールド」というテーマでありながら、撮影者によって解釈が大きく異なる点にもあります。
夕陽を大胆に画面へ取り込む作品があれば、空港の日常風景の中からオレンジ色を発見した作品もあります。光を主役にする人、シルエットを生かす人、都市や建築物との関係を見せる人、花や自然を前景に置く人など、それぞれの撮影者が持つ視点が明確に表れています。

西浦寛樹さんの作品はサグラダファミリアの圧倒的な存在感の中にも機影あり
飛行機を小さく配置することで空間の広がりを感じさせたり、人の姿を取り込むことで「飛行機を見る」という体験そのものを表現したりする作品もあります。
飛行機を撮影する人なら、「自分ならこの場所でどう撮るだろう」と考えながら見るのも楽しみ方のひとつです。同じ空港、同じ時刻であっても、レンズを向ける人が違えば完成する写真は異なります。それこそ写真という表現の奥深さなのでしょう。

澤田晶子さんの作品に伊丹空港のポテンシャルが感じられた
「旅の記憶」が刺戟される温かい作品
飛行機は本来、人や物を目的地まで運ぶ交通機関です。しかし写真の中に入った瞬間、それは旅への期待や別れ、遠い土地への憧れなど、見る側の記憶を呼び起こす存在にもなります。

赤井遥さんの作品はカーブミラーの衝撃 駅や道路にはあるけれど飛行機と絡めるとはさすが
夕陽の中を飛んでいく小さな機影を見れば、「あの飛行機はどこへ向かうのだろう」と想像します。空港で働く人々と飛行機を組み合わせた作品からは、普段何気なく利用している一便が、多くの人々によって支えられていることも感じられます。

作村俊弘さんの那覇(右)と熊本 全国を撮り歩く作者ならではの視点が良いなあ
会場を一周したあともう一度、気に入った作品へ戻りたくなる写真展です。「飛行機を撮った写真」ではなく、「飛行機がいるから成立した写真」。個性豊かな作品を眺めながら、航空写真にはまだまだ多くの表現方法があることを実感しました。
※訪問時にお話しを聞けた方々を出展者順で掲載させて頂きました

