空港での仕事のご褒美は、伊丹⇔高知のYS-11フライトでした。
ブラストフラワーと呼ばれるジェット排気流をデザイン化した尾翼のデザインを持つオレンジの機体も多く、レッドアンドグリーンに変わりつつある頃です。
機体がオレンジなら機内も同色のシートに白い布のカバーが掛かった南国カラーで気分を明るくさせてくれます。
その布はマジックテープになっていて、これを入れ替える作業も伊丹空港でのアルバイトの仕事でしたので、実際に搭乗すると愛着が沸きました。
窓の遮光には、カーテンが装備されており、時代を感じさせます。
ストウェージは無いので、ハットラックと呼ばれる本来は帽子を置く荷物棚が装備されており、赤いブランケットがアクセントでした。
プロペラの横は、ロールスロイスのダートエンジンの力強い動きが観察できる場所として最適でした。
回転するペラの動きが胴体に突き刺さるのではないかと思うほど近くで見られるのも、前方座席の特権です。実際に突き刺さった事は無いにせよ、まさに真横には窓が無かったのは強度を保つ設計上の工夫なのでしょう。
当日のフライトは、低気圧の影響もあり、かなり機体が翻弄されました。
風が当たると回転を抑える様にペラがしなって動くので、悲鳴のような音が聞こえます。それにしても、音が大きいのが印象に残りました。
機内アナウンスが聞き取れない程なのですから。
YS-11初体験は、揺れと共に始まりましたので、高知への着陸が近くなって、ホッとしたものです。
そのような中で突然、エアポケットに入りました。Gが強く掛かり、頭が下へ押し付けられるような血が引く感覚が残ります。
決して不快な訳ではなく、これで少しは飛行機ツウになったものかなと嬉しかったものです。
高空を飛ぶDC-8が貴婦人の佇まいなら、YS-11は低空で暴れるやんちゃな少年のような雰囲気を漂わせています。
帰路は、青空の中を低高度で海の波頭を眺めながら伊丹へ戻って来ました。
ジェットの飛行とは別物だなというのが正直な感想です。
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