御巣鷹山の記憶を未来へつなぐ航空事故絶滅への思い

JAL
羽田空港から離陸するJAL JA8119

羽田空港から離陸するJAL 747SR JA8119

日本航空123便墜落事故から、40年の歳月が流れました。1985年8月12日、御巣鷹山で起きた未曽有の航空機事故は、多くの尊い命を奪い、今もなお私たちの心に深い痛みを感じさせます。

航空ジャーナリストとして、改めてこの事故を風化させてはならないという思いを強くしています。この節目に際し、10年前の30周年時にも当サイトで取り上げたように、航空事故の絶滅へ向けた思いを新たにするものです。

伊丹空港から離陸するJAL 747SR JA8119

40年を経てなお、風化させてはならない記憶

私がこの事故について、30周年の節目で書いた記事では、偶然にも事故機JA8119に搭乗していたフライトレコードが手元にあり、そのことで事故をより身近に感じたという話を記しました。学生時代に伊丹空港でアルバイトした際に撮影した同機の写真も残っており、この事故を忘れられない、いや、忘れてはならないと心に誓ったことを覚えています。

時が経つほどに記憶は薄れがちですが、私たちは犠牲になられた方々の存在と、あの日の教訓を、決して風化させてはならないのです。この悲劇を次世代へ語り継ぎ、空の安全を願うすべての人々の心に深く刻み続けることが、私たちに残された使命です。

伊丹空港で出発作業中のJAL B747SR JA8119の前輪

緊急脱出訓練の必要性

JALが設置した安全啓発センターは、海外にも事例が無く、事故を回顧するには良い施設です。過去を顧みつつ、求められるのは再発防止であり、有事の際の対応です。事故から40年が経ち、航空安全に対する意識は高まりましたが、さらに多くの人々が航空安全について、体系的かつ実践的に学ぶ場が必要です。

一般の乗客が非常時に備えるための実践的な訓練は喫緊の課題です。それは乗務員だけが知っていて良いものではありません。地上で訓練を体験するだけでも生還率は上がります。

先日、Peachが自社社員向けの訓練施設を完成させたというニュースに触れました。これは社員の安全意識向上に非常に有効な取り組みです。こうした素晴らしい施設を、社員訓練のためだけに留めておくのはもったいないと感じています。

Peach社内でもアイデアが出ているようですが、訓練の無い時間に地域住民に開放したり、一般の体験者を募るなどして、より多くの人々が緊急脱出訓練を体験できる機会を提供してみるのも一考です。

伊丹空港を離陸するJAL B747SR JA8119

非常口座席に座る乗客は緊急時の脱出支援を求められますが、いざという時に体が動くように、慣れておくことが何よりも重要です。頭で理解するだけでなく、実際に体を動かして「覚えておく」ことで、パニック状態でも冷静に行動できる可能性が高まります。

実際に機内で脱出が必要になった際は、照明が落ちて何も見えない可能性もあります。脱出スライドから飛ぼうとしてもワイドボディ機の床面の高さを目線で見ると4m以上あってかなり恐怖を感じるはずです。

ここでためらわず勢いをつけて手を伸ばして飛び込むなど、経験しない事には出来ないはずです。まずは、経験することが大事なのです。

Peachの機材はエアバスA320シリーズ。ANAとJALが持つワイドボディ機では、視点はずっと高くなります。絶対に経験・慣れは必要です。

羽田空港で地上滑走するJAL B747SR JA8119

羽田空港を離陸するJAL B747SR JA8119

航空業界の未来と責任

40年の間に、航空技術は飛躍的に進歩し、安全対策も格段に強化されました。航空会社間のアライアンス加盟による相互救援体制も整い、事故発生時の対応力は向上しています。しかし、どんなに技術が進歩しても、航空機を運航するのは人間です。ヒューマンエラーを完全になくすことは不可能であり、それを未然に防ぐための教育と努力は、これからも永遠に続けなければなりません。

航空ジャーナリストとして、そして一人の人間として、御巣鷹山の記憶を風化させず、航空安全の重要性を訴え続けることが重要だと考えています。この悲劇を二度と繰り返さないために、航空事故の絶滅を目指す思いを改めて強く誓います。

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