
ユナイテッド航空が始める空港ゲートでのフードサービス(イメージ)
ユナイテッド航空が、出発ゲートで食事を受け取れる新サービスの試験運用を始めました。2026年9月2日からニューヨーク・ニューアーク空港ターミナルCの一部ゲートを対象にした、アプリからサンドイッチやサラダ、飲み物、スナックなどを注文し、ゲート近くで受け取れるサービスです。今後はヒューストン空港にも拡大する予定です。
一見するとスマートフォン時代ならではの新サービスですが、実は「ゲートで食事をする」という発想そのものは新しくありません。筆者は36年前、トランプシャトルでその光景を実際に体験しました。

ニューアーク・リバティ空港でユナイテッド航空が始めたゲートフードサービス United Airlines
36年前、トランプシャトルのゲートには朝食があった
米国の航空規制緩和後には、多くの新興航空会社が誕生しては消えていきました。その一つが、現米大統領ドナルド・トランプ氏が経営したトランプシャトルです。
イースタン航空が運航していた東海岸の主要都市間シャトルを買収し、1989年6月に運航を開始。路線はワシントンD.C.~ニューヨーク・ラガーディア~ボストンの2路線でした。
筆者が搭乗したのは1990年3月。ラガーディアからボストンまでボーイング727-200型機(N906TS)を利用しました。
当時としては先進的だったのがセルフチェックインです。画面の案内に従って操作するとボーディングパスが出力され、預け入れ荷物がなければ手続き完了。現在では当たり前ですが、当時は新しい時代を感じさせる仕組みでした。
そして、さらに印象に残ったのが搭乗ゲートです。
早めにゲートへ行くと、すでに多くの乗客が集まっていました。そこには新聞、コーヒー、パン類などが用意されています。乗客は明るい陽射しの入るゲートで、搭乗前に朝食を楽しんでいました。
つまりトランプシャトルは、短距離路線であることを逆手に取り、「機内で食事を出すのではなく、搭乗前にゲートで済ませてもらう」というサービスを行っていたのです。
ラガーディアを9時3分に離陸し、ボストンには9時57分に着陸。約350km、1時間にも満たないフライトです。この短い飛行時間なら、食事をゲートで済ませるという考え方には合理性があります。

トランプシャトルのBoeing727-200
アメリカン航空もゲートで食事を提供
トランプシャトルだけではありません。1995年にはアメリカン航空も、短距離便を対象に「Bistro」と呼ばれるサービスを始めました。
乗客は搭乗ゲートに置かれたクーラーから、朝食や昼食の入った袋を自分で受け取ります。朝食にはマフィン、バナナ、ヨーグルト、ジュースなどが用意されました。
背景には短距離便の機内食の廃棄問題がありました。機内で食べる時間が十分にない路線では、せっかく用意した食事が無駄になってしまいます。ゲートで渡せば、機内サービスの負担や廃棄を減らせるという発想です。

アメリカン航空のボーイング767‐200
2018年にはSWISSが「ゲートまで配達」
さらに現代のユナイテッドに近いサービスが、2018年にSWISSがジュネーブ空港で始めた「SWISS Food to Gate」です。
乗客がオンラインで食事や飲み物を注文すると、空港内の提携レストランの商品を搭乗ゲートまで届けてもらえるサービスでした。
これはトランプシャトルやアメリカン航空とは少し違います。航空会社が直接ゲートで食事を提供するのではなく、「空港内のレストランから乗客のいるゲートまで食事を届ける」方式です。
そして2026年のユナイテッドは、これをスマートフォンアプリによってさらに進化させた形といえます。

スイスインターナショナルエアラインズのBoeing747-300 HB-IGG
「新サービス」は過去のアイデアの再登場
こうして振り返ると、1990年=トランプシャトル、1995年=アメリカン航空、2018年=SWISS、2026年=ユナイテッド航空と、「ゲートで食事」という発想が形を変えながら繰り返し登場しています。
なぜ定着しなかったのか。やはり航空旅行では、窓側の席から眼下の景色を眺めながら食事をすることも楽しみの一つだからでしょう。
今回のユナイテッドが新しいのは、食事そのものではありません。「搭乗前の限られた時間を有効活用する」という昔からのアイデアを、アプリや空港内店舗のネットワークで現代化したことにあります。他にも、ゲートへの搭乗客の集合が早くなり、遅延防止になるほか、エアラインにとっては機内搭載品の削減で重量が軽くなり、燃費が改善するメリットがあります。
36年前、トランプシャトルのゲートで新聞、コーヒー、パンを手にした筆者にとって、ユナイテッド航空の新サービスは、まさにその「デジタル版」に見えるのです。
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