
関西国際空港で出発前のエアバスA321LR機
ピーチアビエーションの広報担当者との定例ミーティングにおいて、最近の同社の動向とこの先の展開について話を聞くことができました。
ここ数年の新たな成長戦略として「安さ」から「品質」へと舵を切っています。価格を武器にした従来の戦略から、定時性や快適性といったサービス品質の向上に注力し、顧客満足度の向上を目指す動きが加速しています。また、同じ都市でも2拠点目への就航など、乗り継ぎに便利なビジネス需要の仁川に加え利便性で観光客に人気の金浦へと新たな試みも実行されています。
2025年4月に新たに関西国際空港と中部国際空港から就航した韓国・金浦空港線は、ソウル市中心部に近く、仁川空港に比べてアクセスが良いとして利用者から高評価を得ています。国際線展開において「都心近接型空港」の需要が高まっていることを示す好例です。

関西国際空港でのA320機
セールの頻度減少は戦略的判断
近年、ピーチが実施する運賃セールの頻度が減少している背景には、価格競争から脱却し、ブランド価値を高めたいという意図があります。安さだけを売りにせず、顧客が再び選びたくなる航空会社としての地位を確立することが狙いです。
定時性と快適性を武器に
同社では現在、定時運航率や機内の快適性を向上させる社内プロジェクトを推進中です。日本版顧客満足度指数(JCSI)や英国の航空データ調査機関Ciriumのランキングで上位を目指します。
最近では、バゲージタグ自動発行機導入や運賃や予約画面のリニューアルなど細かい部分にも及んでいます。中距離国際線用のエアバスA321LRのシートピッチの見直しも進められており、安いうえに良いエアラインを目標にします。

関西国際空港でのエアバスA321LR機
収益は堅調も、旅客数に陰りも
2023年と比べて、2024年は収入・RPK(有償旅客キロ)ともに伸びたものの、旅客数は減少に転じました。需要回復のスピードが鈍化しており、今後の施策によっていかに旅客を呼び戻すかが焦点となります。
A321XLRの就航先は未定
新たに発注した中長距離型機材であるA321XLRの就航先については、「アジアやオセアニア方面が想定される」との見解があるものの、公式な情報提供はされていません。ピーチアビエーションの広報担当は個人的にはオーストラリアが希望と話す通り、その可能性は高いと思われます。この新機材は今後の国際線拡大のカギを握る存在として注目されており、Air Japanとの路線重複が気になるところですが、グループ内では競合の厳しさなど感じさせることはありません。
両社は社員交流で、SNS活用などを中心に情報交換を行っており、業界横断でのベストプラクティスの共有にも積極的です。こうした取り組みは、業界全体の底上げにもつながる可能性を秘めています。

ピーチアビエーションの客室乗務員
自社施設を7月に開設へ
2025年7月には、関西国際空港内に同社の自社施設がオープンします。詳細は未公開ながら、同月下旬にお披露目されることから間もなく知られることになります。同時期に、旅客ハンドリング業務も自社化され、オペレーション全体の質的向上が図られます。

関西国際空港でのエアバスA320機
経営トップの発信は「今後に期待」
ピーチアビエーションの大橋社長のインタビューは実現しませんでした。同氏は就任直後から、メディアへの発信は控えているからです。その背景には「まずは社内体制を固め、品質を高めてから外部発信を行う」という考えがあると言います。組織としての成熟を優先する姿勢が見て取れます。
ピーチアビエーションは、13周年を迎え、LCC市場の中でも次の成長フェーズに突入しつつあります。価格の安さを超えて、選ばれる航空会社を目指すその挑戦は、業界内でも注目を集めています。