ANAHDによるNCAのグループ入り歓迎式典と両社の人的交流

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NCA格納庫にてNCA社員の前で行われた歓迎式

NCA格納庫にてNCA社員の前で行われた歓迎式

ANAホールディングスは2025年8月1日付でNCAの全株式を取得し、同社をグループ企業に編入することになり、8月4日にANAHDによるNCA歓迎式典が成田空港のNCA本社格納庫にて行われました。これにより、ANAグループは旅客事業と並ぶもう一つの柱として、貨物事業の本格強化に乗り出します。

ANAは従来から「ANA Cargo」ブランドで貨物事業を展開してきましたが、旅客機のベリースペース(床下貨物室)を用いた輸送とアジアを中心としたボーイング767貨物機6機と米州向けのボーイング777貨物機2機の運航でした。

これに対し、NCAはボーイング747-8Fを8機運航する純粋なフレイター会社であり、貨物に特化したオペレーションノウハウを豊富に有しています。両社の統合により、ANAグループは貨物機によるフルキャパシティの運航と旅客機による補完的輸送の両輪を持つ強力なコンビネーションキャリアとしての体制を構築することが可能となります。

NCAのボーイング747-8F

今回の歓迎式典は、NCAの従業員約200名が参加して行われ、ANAHDの代表取締役社長 芝田浩二氏、NCAの代表取締役社長 本間啓之氏による挨拶、NCA新役員体制の紹介、さらには記念撮影などが行われました。これは単なる儀礼的なイベントではなく、グループ一体化に向けた象徴的な一歩として位置づけられます。

NCAとはどのような会社か

日本貨物航空(NCA)は、1978年にANAと日本郵船含め6社の船社の共同出資によって設立され、後に日本郵船の完全子会社として独立運航を続けてきた、日本で唯一の国際線専門の貨物航空会社です。貨物専用機をアジア・北米・欧州を結ぶグローバルな貨物ネットワークを展開し、日本の輸出入物流を支える存在として知られています。

長年にわたり輸送品質において高い評価を受けてきたNCAですが、近年は世界的な貨物需要の変動や航空燃料費の高騰、加えて保有機材の整備課題などが重なり、経営の効率化と再構築が求められていました。

式最後の記念写真撮影の様子

両社トップの交流 〜人間味あふれるエピソード〜

ANAとNCAのトップは、単なるビジネスパートナーではなく、長い歴史を持つ信頼関係を築いてきました。同式典において、ANAHD代表取締役社長 芝田浩二氏は、NCA創業当時のエピソードを語り、両社の絆を強調しました。

ANAHD芝田社長の挨拶

芝田社長によると、両社の本社が霞が関ビルにあった頃、週末にはお互いの社員が誘い合って、ビル地下の駐車場から車で新潟方面へスキーに行くことが多かったという。こうしたエピソードは、両社の創業期から続く深い交流と、社員同士の強い絆を象徴するものです。公式の場でのスピーチにしては心温まるもので、良いものですね。

NCA勤務経験を持つ筆者はANA CARGO脇屋社長(NCA取締役就任)との長い付き合いを本間社長が持ち合わせていることを知っています。脇屋社長のANA新人時代、大阪で両社の若手貨物営業マンとして切磋琢磨し、お互いに信頼と尊敬の念を抱き合う関係を築いていました。

NCA本間啓之社長の挨拶

そのような土壌もあり、NCAがANAグループに加わることは、スムーズで成功に向かうに違いないと筆者自身も確信しています。人間味あふれるこうしたエピソードは、企業統合を単なる経営戦略ではなく、人と人とのつながりを大切にした結果であることを示しています。

業界再編の文脈とANAの狙い

航空業界はリーマンショックやコロナ渦で、世界的に需要構造が大きく変化しました。旅客需要が激減した2020〜2021年には、貨物事業が航空会社の重要な収益源として脚光を浴びました。ANAも例外ではなく、貨物部門の収益は全社の業績を支える存在となったのです。

ANAはこれまで貨物機の運用を限定的に展開していましたが、今回のNCA統合により、一気に貨物機戦力を増強できることとなります。これは、北米・欧州・アジアを結ぶ航空貨物ネットワークの強化、さらにはeコマース市場の拡大やグローバル物流の最適化という時代の要請に応えるものです。

また、ANAにとっての狙いは単なる「規模の拡大」ではなく、貨物に特化したNCAの高度な運航ノウハウを自社の資産として取り込み、貨物事業全体の競争力を高める点にあります。

NCA新役員対体制の集合写真

ANAグループにとっての「新たな翼」

NCAを迎え入れることは、ANAグループにとって「新たな翼」を得ることを意味します。これは単なる企業買収ではなく、日本の航空貨物輸送の新たなステージの幕開けでもあるのです。歓迎式典という節目を経て、ANAグループとNCAが一体となり、より強靭で柔軟なグローバルロジスティクス体制の構築に向けて、大きく羽ばたいていくことを期待したいと思います。

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