
2024年4月11日ヤマトフレイター初日の成田でのA321P2F
ヤマトホールディングスとJALグループは9月3日、2024年4月から運航してきた国内線フレイターの運航を2027年6月までをめどに終了すると発表しました。物流の「2024年問題」によるトラック輸送力不足を補う切り札として始まった事業でしたが、わずか約3年で幕を閉じることになります。
今回の事業では、エアバスA321ceoを貨物機に改修したA321-200P2Fを3機導入。JALグループのスプリング・ジャパンが運航を担い、新千歳、成田、羽田、関西、北九州、那覇などを定期便で結んでいました。

2024年4月11日ヤマトフレイター初日の成田でのA321P2F
しかし、ヤマト側によると、トラック輸送は人手不足や燃料高でコストが上昇する一方、航空輸送も円安や燃油高によってコストが上昇し、トラックと航空の価格差が当初の想定に反して拡大しました。路線の見直しや費用効率化、高付加価値サービスなどにも取り組みましたが、最終的には旅客便の貨物スペースを使う「旅客便ベリー」などを活用する方が最適と判断したのです。

2024年4月11日ヤマトフレイター初日の成田でのA321P2F
過去にも続かなかった国内貨物航空
実は、日本の国内貨物航空は今回が初めての「新しい事業」ではありません。
過去にはJALグループの貨物専門会社だった「JUST」をはじめ、佐川急便が設立した「ギャラクシーエアラインズ」、「オレンジカーゴ」など、国内貨物航空に挑戦した事業者がありました。しかし、いずれも長期的な定着には至っていません。
そこには日本独特の物流事情があります。
日本では宅配便を含むトラック輸送網が全国に張り巡らされており、航空機で幹線輸送しても、空港までの集荷と空港からの配送という前後の陸送が必要になります。一方、ANAやJALは全国の主要都市を結ぶ旅客定期便を大量に運航しており、その貨物室を利用できます。
つまり、貨物専用機を飛ばさなくても、既存の旅客便ネットワークで一定の航空貨物需要を取り込めるのです。
実際、ANAの2026年3月期決算を見ると、国内線貨物収入は252億円。一方、国際線貨物収入は1884億円で、国内比率は12%、貨物事業そのものが国際線中心となっています。
JALについても、同時期の国内線貨物収入はANAより高い334億円なるも国際線貨物収入は1,562億円で、国内比率18%です。

2024年4月11日ヤマトフレイター初日の成田でのA321P2F
「国内貨物航空は不要」なのではない
では、今回の撤退は国内航空貨物そのものに将来性がないことを意味するのでしょうか。私はむしろ、「貨物専用機で運ぶ必要性が想定ほど高くなかった」ことが示されたと考えます。
ヤマトとJALは今後も旅客便ベリーを活用し、特に半導体や自動車関連、農水産品などの需要が見込まれる北海道・九州では航空輸送を継続するとしています。

2024年4月11日ヤマトフレイター初日の成田でのA321P2F
今回の「空飛ぶクロネコ」の挑戦は失敗というより、日本の物流において「貨物専用機」と「旅客便の貨物室」のどちらが効率的なのかを改めて浮き彫りにした事例と言えるでしょう。
「トラック不足だから貨物機」という単純な図式ではなく、既存の陸送網と旅客便ネットワークを組み合わせる――。今回の撤退によって、日本の国内物流ではその答えがより鮮明になったようです。

