旅客機と貨物機のオペレーションについて語ってみます

フレーター

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旅客機と貨物機は、搭載するものが違います。

旅客機が載せているのは、「命」であり、貨物機は比較的高価な「物」です。

運航上の区別は無いので、コックピットも基本的に同じです。

違いがあるとすれば、操縦士の感覚でしょうか。

それを3つのカテゴリーに分けてお知らせします。

1.重量の違い

より重くなるのは貨物機です。機体をボーイング747ジャンボジェットで考えてみます。

旅客の場合は、全員の体重と手荷物の重量を測ってはいないので、安全係数として一人平均120KG程度として多めに見込んで計算します。

平均体重70KGに、手荷物エコノミーで23KGを2個無料で受託するというケースを想定しましょう。70 +23 +23で116KGになります。

ビジネス、ファーストクラスは手荷物許容量が大きいので、仮に120KGとします。各社違いはあるものの、400名搭乗するとします。重量は120KG×400人=48トンになります。これは予測重量な為に、実重量はここから減る事が多くあります。

それに対し、貨物機では最大搭載量は100トン超えになることもあり、この数字は実重量でもあるので、重量の遊びの部分が全く無く、余裕の無い真剣勝負になります。このような状況で、パイロットは雪氷滑走路での最大重量の離陸には気を遣います。

2.時間の違い

夜間飛行が多くなるのは貨物機の特性です。国際線では昼間に輸出入手続きを行うので、どうしてもフライト開始は、深夜であったり早朝になります。

空港発着枠が旅客便とは違う時間で取り易いという理由もあります。

旅客に関しては、人の往来の標準的な日中時間になります。

貨物業務に従事する職員に、より負担が掛かる事がお分かり頂けるでしょう。

3.意識の違い

敢えてお伝えすると、旅客便はパイロットの緊張感がより高いのは間違いないでしょう。物を言う生きた人間ですし、まさに命が載っています。

特に、国際線で一切の食事が出せない状態などありえない状態でしょう。

そうならないように、速度、高度、進路を最適に保つ為にあらゆる手を尽くして飛行します。

このような特性の故に、気を遣いたくないという乗員は貨物便を好みますし、やはり旅客を乗せての緊張感と遣り甲斐を求めて旅客便パイロットになったという人もいます。

このように、外見からは解らない違いがあるものですね。

私自身は、どちらが好きという意識はありませんが、一般の方が近付き難いという点では貨物機に軍配があがります。


自身の経験では、サンフランシスコから成田空港へのボーイング747貨物直行便でのコックピットでの出来事が忘れられません。

機長の後ろのオブザーブシートに腰を下ろしていました。

冬の日の早朝フライトは、まだ空港の夜が明けていない雰囲気の中でスタートします。誘導路のそばの芝生には霜が付いているのが見えて、寒さを予想させます。

航空機重量、貨物満載、燃料満載で300トンを超えるジャンボ機の離陸で雪氷滑走路の可能性があり、滑走路長に少しの余裕もありません。

出発前の燃料が減らないうちに滑走路の離陸位置に来てしまった場合に、重量が重過ぎて、飛び上がらない計算になる時があります。

この対応は、離陸直前に燃料を消費するしか無いのです。

滑走路端で、エンジンの空吹かしをします。

10分程度エンジンを回したまま待ち、その後、離陸許可が出ます。

出力を最大限に生かす為に、滑走路端で完全に機体を停めて、出力を最大にした後に離陸するスタンディング・テイクオフに移ります。

目の前にはサンフランシスコの3000m滑走路が真っ直ぐ伸びています。

その日の離陸滑走は、極めて長くシビアで緊張しました。

コックピットは極度の緊張感が走り、副操縦士の速度コールの声だけが小さなコックピットに響きます。

走っても走ってもなかなか機体は浮き上がりません。

重い機体を支えるタイヤが滑走路の少しの凹凸を拾い、悲鳴をあげます。

滑走のリズムが「ドスン、ドスン」という音から「ドン、ドン、ドン」に変ったところでようやく機体は重い頭をあげました。思わず、機長席の背もたれ部分をつかんでいました。

足元には、滑走路端の柵が触れそうな位置にあった事を緊張感と共に思い出しました。

何れにせよ、パイロットの世界は常にハードです。

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コメント

  1. 遊びの森 より:

    滑走のリズムが「ドスン、ドスン」という音から「ドン、ドン、ドン」に変ったところでようやく機体は重い頭をあげました。 
    今まで気が付きませんでしたが、確かにそうですね、すごい表現力だと感心致しました。
    まさに、緊張感を持たせる 離陸時の醍醐味ですね。
    無事に離陸し、ここから 飛行機の 上昇 急角度が 快感であり 、私は大好きです。
    Fed Ex のDC-10 のフォトも 素敵です。

  2. あびあんうぃんぐ より:

    遊びの森様
    いつも見て頂いてありがとうございます。
    コックピットからの離陸は迫力ありましたよ。その時は、離陸後の上昇がかなりゆっくりでもどかしい感じでした。エンジンの出力が最大でもなかなか上昇しないのが発見でした。
    今後とも宜しくお願いします。

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