
事故4日前のドバイエアショー初日に飛ぶテジャス機
筆者は世界中の航空関係者が集うドバイエアショーを訪れ、初日の11月17日に会場でフライトディスプレイを鑑賞しました。毎日午後から始まる飛行プログラムの中で、インド空軍の軽戦闘機テジャスが、午後5時前となる17番目という位置で離陸し、その優れた機動力を披露してくれました。同日は19組が飛行を披露しており、トリに近い場面での雄姿でした。
インド国産戦闘機「テジャス」の概要
テジャスは、インドのヒンドゥスタン・エアロノーティクス(HAL)社が開発した単発・軽量の多用途戦闘機です。長年にわたるインドの航空技術開発の成果であり、「光(Tejas)」という名が示す通り、インドの航空産業の未来を担う「国産の光」として、国内外から大きな期待が寄せられてきました。
特に、フランスのミラージュ機を思わせるデルタ翼と呼ばれる特徴的な三角形の主翼は、高速性能と高い運動性を両立させる設計であり、国際的なエアショーにおいても、そのアクロバティックな飛行技術が注目されていました。私はその洗練された機体と、パイロットによる鋭い上昇や高速パスを、間近で目に焼き付けていたのです。

ドバイエアショー会場内の様子
目の当たりにした同型機のショー初日
それだけに、エアショー最終日である21日の午後に、その同型機がフライトディスプレイ中に墜落したという悲しい報せを受けた時の衝撃は、大きなものでした。つい数日前、ドバイの澄み切った空を華麗に舞っていたのと同じ、高い技術力の結晶である機体が、今、予期せぬ事故により失われたという事実に、胸を締め付けられるような痛ましさがこみ上げてきます。
フライトディスプレイは、機体の性能とパイロットの技量を極限まで引き出し、観客に感動を与えるものですが、同時に常に危険と隣り合わせであることも、今回の事故は改めて私たちに突きつけました。空の安全を追求し、国の威信をかけて命懸けの技術を披露するパイロットの勇気に、敬意を表します。
この事故で犠牲になられた方に、心より哀悼の意を表しますとともに、ご関係の皆様にお見舞いを申し上げます。華々しい舞台の裏にある、危険と隣り合わせの厳しさを痛感させられた、ドバイエアショーとなりました。テジャスが再び、安全な空でその美しい姿を見せてくれることを願ってやみません。

