ANAとアマデウス、どこを見ているのか

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SNS上のアマデウスの告知 ©Amadeus

Completedが空しい、SNS上のアマデウスの告知 ©Amadeus

ANAが2026年5月19日に実施した国内線予約システム刷新は、日本の航空業界における最大級のITプロジェクトの一つでした。長年運用してきた国内線システム「ABLE」から、世界標準ともいえるアマデウスの「Altéa」への統合は、国際線と国内線を一元管理し、将来的な商品設計や顧客サービスの高度化を実現するための重要な投資です。ANAにとって避けて通れない変革であったことは間違いありません。

ANAのボーイング787‐9

しかし、その移行後に発生した現実は、決して順風満帆とは言えませんでした。

ANAは6月11日、「国内線サービスのリニューアルに伴い、お客様には多大なるご不便とご心配をおかけしています」と公式に謝罪しました。予約・購入・照会・チェックインなどで処理遅延が発生し、問い合わせ窓口は混雑、メール返信には数週間から2か月程度を要する状況も発生したと説明しています。

一方、そのわずか5日後の6月16日、アマデウスはSNS上で今回の移行を「A milestone moment for ANA and Amadeus(ANAとアマデウスにとって記念碑的な瞬間)」と称賛しました。

さらに、「これまで実施した中でも最もスムーズな移行の一つ」とまで表現しています。

もちろん、アマデウス側から見れば、この発言には一定の根拠があるのでしょう。数百空港、数千便規模のDeparture Control System(DCS)切り替えが停止なく行われたのであれば、技術的には成功と言えるのかもしれません。

しかし、多くの利用者が不便を感じ、航空会社自身が謝罪している最中に、「最もスムーズな移行」と発信する姿勢には強い違和感を覚えます。

ANAのA321neo

GDS業界のリーダーとして求められる視点

アマデウスは単なるシステムベンダーではありません。世界の航空会社、旅行会社、空港を結ぶGDS(Global Distribution System)および旅客サービスシステムの世界最大手の一角です。航空業界全体のインフラを支える存在であり、その影響力は極めて大きいものがあります。だからこそ、求められるのは「システムが予定通り動いた」という技術者視点だけではありません。

本来評価されるべきなのは、

  • 利用者が問題なく予約できたか
  • コールセンターに電話せずに済んだか
  • 搭乗当日に不安を感じなかったか
  • 空港現場に過度な負荷をかけなかったか

という顧客視点です。

航空業界では昔から「ITプロジェクトは成功したが顧客は不満だった」というケースが少なくありません。特に予約システムは航空会社の商品そのものであり、利用者にとってはエンジンの中身ではなく使い勝手がすべてです。

仮にバックエンドの切り替えが完璧だったとしても、顧客が困っているのであれば「成功」と言い切るのは早計ではないでしょうか。

SNS上のアマデウスの告知文 ©Amadeus

今こそ必要なのは謙虚さ

ANAがAltéaへ移行した理由は理解できます。世界標準への統合は将来的に大きなメリットをもたらすでしょう。今後数年で新しい運賃体系やパーソナライズ販売、他社との連携強化など、多くの成果が生まれる可能性があります。

しかし、大規模システム移行の評価は、利用者が安定して使えるようになった時点で初めて下されるべきものです。

世界の航空業界を支えるリーディングカンパニーであるアマデウスだからこそ、「我々は素晴らしい仕事をした」と語る前に、「利用者にご不便をおかけしていることを認識している」「ANAとともに改善に取り組む」というメッセージを発するべきではなかったでしょうか。技術的成功と顧客満足は必ずしも同義ではありません。

今回のSNS投稿は、その両者の間にある大きなギャップを浮き彫りにした出来事として記憶されるかもしれません。

航空業界のDXが進む時代だからこそ、GDS業界のリーダーには「システム中心」ではなく「利用者中心」の姿勢がこれまで以上に求められているのです。

 

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