コロナ禍を過去のものにする最高益のANA・JAL2026年3月期決算 

ANA
ANAのボーイング787‐9

ANAのボーイング787‐9

2026年3月期の決算発表において、ANAホールディングス(以下、ANA)とJALの国内2強エアラインはいずれも過去最高益を更新し、コロナ禍からの完全復活を印象付けました。

ANAの売上高は、旺盛な訪日需要に加え、2025年7月からの日本貨物航空(NCA)の連結化が寄与し、前期から大幅増となる2兆5,392億円を記録しました。対するJALも、航空・非航空事業ともに堅調に推移し、再上場後の最高収益となる2兆125億円に到達しています。売上規模においては、貨物事業の強化や多角化を加速させたANAがJALを上回る形となりました。

純利益についても、両社は力強い数字を示しています。ANAは前期を大きく上回る1,690億円の純利益を計上しました。一方、JALの当期利益は1,430億円となり、1株当たり純利益(EPS)も306円と中期経営計画の目標値を達成しています。利益の絶対額ではANAに軍配が上がりますが、JALは売上に対する利益率の高さで効率的な経営を維持しており、両社がそれぞれの戦略に基づいた健全な収益力を発揮した決算となりました。

ここで注目するのは、単なる利益の規模だけではなく、将来の不透明感に耐えうる「経営体質の健全性」です。財務諸表の主要指標から、両社の現在の立ち位置と健全性を比較します。

JALのエアバスA350-900

強固な自己資本と財務安定性の回復

経営の健全性を測る上で最も重要な指標の一つが自己資本比率です。JALの自己資本比率は40.3%に達し、前年末の34.9%から5.4ポイントの大幅な改善を見せました。一方のANAは37.7%となっており、前年末の31.2%から6.5ポイント改善しています。数値上はJALが依然として高い水準を維持していますが、ANAの改善幅はそれを上回っており、両社ともにコロナ禍で傷んだ自己資本の修復が着実に進んでいることが伺えます。

また、負債のバランスを示すD/Eレシオにおいても顕著な改善が見られます。ANAの有利子負債残高は前期末から1,773億円減少して1兆1,717億円となり、D/Eレシオは0.8倍まで低下しました。JALも有利子負債を201億円削減して8,759億円とし、負債の圧縮を進めています JALは今回、2,000億円の社債型種類株式の発行を決定しており、既存株主の希薄化を抑えつつ、さらなる自己資本の拡充と成長投資の資金確保を両立させる構えです。

ANAのA321

収益力と資金創出力の比較

稼ぐ力の指標である営業利益(JALはEBIT)についても、両社は高い水準にあります。ANAの営業利益は2,174億円で、売上高営業利益率は約8.6%です。これに対し、JALのEBITは2,180億円で、EBITマージンは10.8%に達しました。利益の絶対額はほぼ同等ですが、マージンの高さにおいてはJALが優位に立っており、効率的な収益構造を構築しているといえます。

キャッシュフローの状況も健全です。JALの営業キャッシュフローは3,948億円を創出し、フリーキャッシュフローは2,117億円のプラスとなりました。これにより、配当などの株主還元と成長投資を自前の資金で賄える体制が整っています。ANAも最高益を背景に、配当金を当初計画から増額して1株あたり65円とするなど、強固なキャッシュ創出力を株主に還元する姿勢を鮮明にしています。

JALのエアバスA350-900

今後の不透明な事業環境への対応力

両社の経営体質は現時点で極めて健全と言えますが、2027年3月期に向けた見通しには慎重さが漂います。中東情勢の緊迫化に伴う燃油費の高騰や円安の進行など、外部環境の不確実性は高まっています。ANAは来期の営業利益を1,500億円と、今期から減益の計画を立てており、コスト増への警戒を強めています。

JALも来期のEBITを1,800億円と見込んでおり、今期実績を下回る予想を立てています。しかし、両社ともに非航空事業の拡大やLCC事業の強化を進めており、事業ポートフォリオの多角化によって外部ショックへの耐性を高めようとしています。

総じて、JALは高い資本比率と収益効率を背景にした「盤石な守り」が特徴であり、ANAは急速な財務改善と積極的な増配に見られる「回復の勢い」が際立っています。両社ともに過去最高益という追い風を活かし、次の局面を見据えた強固な経営基盤の再構築に成功したと言えるでしょう。

 

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