日本から欧州へのフライトで、北回り、南回りという呼称があったことを覚えていらっしゃるのは、30歳代以上の方でしょうか。
日本から初めての欧州航空路線は南回りで、アジアの各国と中東を経由して行く大掛かりな行程でした。
航空機の発達に伴う航法装置の進化で、北極圏を通る北回りは、米国アラスカ州のアンカレッジで途中寄港していました。
KLMは、北極のそばを飛ぶ通称「ポーラールート」を他社に先駆けて飛んだ初期エアラインの一社です。
太極圏を飛ぶのに日本から欧州へ飛ぶ航空機はアンカレッジを経由していました。
東京からアンカレッジまで6時間、そこから欧州の中心地までジェット気流に逆らって飛びますので、8時半ほど掛かります。
成田空港を21時30分に出発するKLM868便は、ボーイング747-206BM型機 で満席のお客様と貨物を載せて、68万ポンド(308㌧)の機体を大空に浮かべます。機体はPH-BUNの機番を持ち、アンソニー・フォッカーというオランダの機体メーカー創業者の名前をニックネームとしています。
ビジネスクラスの座席は、L2と言われる左舷二番目のドアから搭乗すると、すぐ右の一角になります。一部のジャンボ機に装備されていた、L2からL3に掛けての右舷に縦長のギャレーのある機体で、客席の右側はギャレーの裏面で壁になっています。
現在のように、機能性の高いフルフラットシートの出現はまだまだ先のことで、当時はまだ3-2アブレストで並ぶエコノミーのシートのままでした。
メニューが残されており、表紙はオランダ西部都市の春のモザイクカラーに色付くという説明と共に風景の写真が掲載されています。
成田→アンカレッジでは、サパー(ディナーではない)としてオードブルに始まり、メインはワインソース掛けのビーフかチキンのチョイスです。
付け合わせは、フライドポテトのみ。今のビジネスクラスのメニューに比べて簡素です。その後は、デザートとコーヒーしか記載されていません。
アンカレッジ→アムステルダムでも昼食として次のメニューがサーブされています。オードブルから始まり、ビーフヒレもしくは舌平目小エビのワインソース掛けのチョイスになっています。付け合せはそれぞれ、ブロッコリーとビーフにはポテトコロッケで、舌平目にはゆでじゃがいもがサーブされます。
到着前には、朝食の用意があります。
コーヒーか紅茶。ホットスナック・ロールパンとバター・スイートロールにフルーツです。
二区間を乗り通す旅客だけ搭乗していますので、メニューも続けて記載されています。
高度35,000フィート(約11,000㍍)で順調にフライトした機体は、午前にアンカレッジに到着します。
今は懐かしい北極圏通過証明書が配られました。
それに加え、ビジネスクラスのお客様には手のひらに乗るサイズのオランダでは有名なデルフト焼きのタイルがプレゼントされます。トレーに載せられた多くの中から自分の好みの物を選ぶのも楽しい時間です。
ファーストクラスでは同じくデルフトの家をかたどったミニボトルに入ったウィスキーの種類も多く、コレクターがいると聞きました。
成田空港から6時間のフライトの後、アンカレッジでは多くの日本人が、免税品店で買い物したり、同所名物のうどんを食べたりして過ごします。
乗務員は全員がここで交代となります。
南廻りは、アジアの2~3ヶ国に中東1ヶ国の経由は当たり前という時代でしたので、所要時間はゆうに20時間を越えていました。
それに比べ、北廻りの16時間程度の行程は何と短く感じられた事でしょう。
特に、アンカレッジまでの6時間は、あっという間です。
機内では、現在のようなモニター画面で航路を確認するなんて事はできません。
ギャレー近くにに航路図が掲示され、興味のある人が眺めていくという程度でした。
その航路図を北極点通過証明書とともに時代の証拠として大事に保存しています。
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