
ドバイエアショー2021会場でのエミレーツ航空A380ドア前で微笑む客室乗務員
ポストコロナの航空業界の勢いそのままに開催となるドバイエアショー2025(11/17-11/21)に向けて公開されたボーイングとエアバス両社のプレスリリースを比較すると、中東市場に対するアプローチ、展示の焦点、そして未来技術の訴求方法において、違いが見て取れます。両社ともにこの地域を「戦略的市場」と位置づけていますが、そのメッセージのトーンと展示構成には特徴があります。

ドバイエアショー2021で派手な飛行展示を行う777X
戦略的な焦点とメッセージの違い
ボーイング社のリリースは、80年以上にわたる中東での「提携の遺産」と、この市場が牽引する「記録的な受注」に基づく「戦略的成長」を強調する内容となっています。成功の実績と強固な関係を基盤とし、地域のナショナルキャリアや防衛顧客のビジョン実現に貢献するという、地に足の着いたアプローチを採っていることがわかります。
一方、エアバス社のリリースは、エアショーのテーマを「Flying towards the future・未来に向かって飛ぶ」と掲げ、イノベーション、持続可能性、協調的パートナーシップを通じた「航空の未来の形成」に焦点を当てています。これは、中東とのパートナーシップを基盤としつつも、未来志向で、次世代の技術を積極的に提示する姿勢を明確に示していると言えるでしょう。

ドバイエアショー2021で飛行展示を行うA350-900
展示機の構成
展示される機体ラインナップにも、両社の戦略的な違いが表れています。ボーイング社は、民間航空(777X、737 MAX)、防衛(F-15、C-17、AH-64に加えB52までも)、およびサービスを網羅した非常にバランスの取れた機体群を披露します。
特に防衛分野では、多岐にわたる現行の戦闘機や輸送機が米国およびUAE軍によって展示される予定であり、同社の包括的な防衛ソリューション提供能力をアピールしています。また、777X飛行展示に加え地上での機内公開も、フラッグシップ機製造遅延の挽回への注力を示しています。
対してエアバス社は、民間機(A350-900、A350-1000、A220)が展示の中心となっており、その中でもA350ファミリーの飛行展示が目立っています。軍用機としてA400MやC295もリストアップされていますが、ボーイングに比べると民間機と未来技術の展示がより前面に出ている印象です。

エアバスはウガンダ航空へ引き渡し前のA330neoを地上展示しました
環境と未来技術の訴求方法
持続可能性に対するアプローチは、両社の違いが最も明確に出た部分です。ボーイング社は、持続可能性に関する会議の戦略的スポンサーシップに加え、航空の環境負荷低減オプションを評価する「ボーイング・カスケード気候影響モデル」といったデータモデリングを通じた貢献を強調しています。これは、機体コンセプトの提示よりも、データ分析、そして産業協力という側面から、持続可能性を達成するという戦略的意図の現れであると考えられます。
一方で、エアバス社は、「ZEROe」と呼ばれる完全に電動化された水素駆動のコンセプト機や、A319neoのSAF給油デモンストレーションなど、未来の航空機と燃料技術を具体的に「目に見える」形で展示の目玉としています。脱炭素化のテーマをイベント全体の中心に据えている様子が伺えます。
これらのことから、ボーイングは「長い歴史を踏まえ、全方位的に中東の成長に貢献する」というメッセージを、エアバスは「革新的な未来の技術を提示し、持続可能性の実現を主導する」というメッセージを、それぞれドバイの舞台で発信すると予測されます。

