タラップを上がると、そこにはエコノミークラスの座席の片側3席が備わっていました。コックピットドア横には、簡単なギャレー(調理室)が装備されています。
機関士のいるボーイング707なので、乗務員は三名、他にオンボードメカニックが1名。この便は、総勢6名となって出発です。
コックピットに入ったレバノン人の乗務員は、やおらシYシャツを脱いで肌着一枚になり、ズボンもたくし上げて暑さに備えます。さすがの貨物便です。地上ではエアコンを廻さず、離陸後の稼動と知らされました。座席にいると、機外を見ることができません。リクライニングの効かない座席に座り、白熱灯の下にいると、どこかの倉庫にでも入った気分です。
希望が叶い、コックピットへ。操縦桿の黒光りが、年季の入った機体である事を物語っています。
貨物が満載で重量が重いので、成田では滑らかな角度で長くランウェイを使い、低高度でゆったりと離陸して行きました。ランウェイ16で、左にあるJALの格納所がさほど下に見えない状況は初めての経験でした。機体が九十九里浜を越え海に出る辺りで、エアコンも効いて来ましたので、楽になります。
富士山を右手に見ながら、どんどん遠ざかるというのは日本人としての一抹の寂しさがあります。しかし、更にコックピットにいれるという期待感を胸に、ほぼこの中で過ごさせて貰いました。
旅客機ではギャレーになる部分が収納棚になっています。機内食は、メカニックに聞きながら、クーラーボックスにミールが入るものを勧められました。お湯はあるので、コーヒーもインスタントで頂きます。サービスはセルフサービスで行う、貴重な航空輸送を体験することができました。
帰路は、再度のディレーで朝発が午後になるというおまけも経験し、成田へ戻ったのでした。