米韓の政治舞台を背景に大韓航空がボーイング機103機を大量発注

ボーイング
羽田空港での大韓航空ボーイング787-10(撮影:筆者)

羽田空港での大韓航空ボーイング787-10(撮影:筆者)

 

大韓航空は2025年8月25日、ボーイング航空機103機とGEおよびCFMエンジン19基を発注したと発表しました。これは大韓航空史上最大の契約であり、総額130億ドル(約1兆8900億円)の巨額投資になります。

発注の内訳は、ボーイング777-9型機20機、ボーイング787-10型機25機、ボーイング737-10型機50機、そしてボーイング777-8F型貨物機8機が含まれます。これらの航空機は2030年末までに段階的に納入される予定です。

この発注は、米ボーイング社にとって13.5万人の雇用創出になり、製造業における両国の経済的な結びつきを改めて示すものとなりました。

インチョン空港を離陸する大韓航空のボーイング787-10(提供:大韓航空)

米韓首脳会談との連携

この歴史的な発注は、韓国の李在明大統領と米国のトランプ大統領による首脳会談と同時期に行われました。北朝鮮の非核化問題や経済安全保障など、幅広い議題が話し合われましたが、特に注目されたのは、韓国政府による関税率の引き下げ交渉であり、大韓航空の大量発注は、この交渉を有利に進めるための強力なカードとして機能したと考えられます。

経済と政治の連動

航空機の発注は、単なる企業の事業戦略にとどまらず、両国の政治的・経済的な関係を深く反映しています。特に、製造業に重点を置くトランプ政権にとって、自国企業への巨額な投資は、政治的な成果としてアピールしやすい側面があります。

一方、韓国にとっては、自国の主要産業の輸出促進や米国の主要産業への貢献を明確に示すことで、関税問題だけでなく、サプライチェーンの安定化や技術協力など、より広範な分野での関係強化を期待する狙いがあると考えられます。

今回大韓航空が発注したボーイング787‐10(下)と777-9(提供:ボーイング)

大韓航空のTOPメッセージ

大韓航空の会長兼CEOであるウォルター・チョ氏は、「長年のパートナーであるボーイング社とGE社との今回の契約は、大韓航空にとって極めて重要な節目となります。これらの次世代航空機の導入は、当社の機材近代化戦略の中核を成すものであり、燃費効率を大幅に向上させ、グローバルネットワーク全体で乗客体験を向上させることにつながります。また、この投資は、アシアナ航空との合併後の航空会社としての将来にとって、業界で最も競争力のある航空会社の一つとなるための重要な基盤となります。」と述べました。

大韓航空による機材発注は、単なる企業の取引を超えた、米韓両国の経済的・政治的な関係強化を示す象徴的な出来事でした。

大韓航空の航空機発注調印式の様子(左から)韓国産業通商資源部のキム・ジョングァン大臣、大韓航空および韓進グループのウォルター・チョ会長兼CEO、ボーイング民間航空機のステファニー・ポープ社長兼CEO、米国商務長官ハワード・ラトニック氏(提供:大韓航空)

日本はどうか

日本では、石破政権においてボーイング航空機100機の発注コミットメントがなされました。日系エアラインでは既にANA、JAL、SKYで100機超えが契約済であり、新たな航空機発注となると防衛分野でないと難しいという声も聞かれます。韓国はスマートに交渉できましたが、日本政府はなかなかそういかなかったようです。

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