
2021年のドバイエアショーで超絶デモ飛行するBoeing777-9 (撮影:筆者)
Boeing 777Xは、次世代の大型双発機として期待を集めるモデルです。777-9は全長76.7メートルで座席数426を誇る最大級の旅客機であり、航続距離は約13,500㎞です。一方、777-8は70.8mと全長が短いものの、航続距離は約16,190㎞とさらに長く、超長距離路線向けに開発されています。両機ともにGE9Xエンジンや複合材主翼、折りたたみ翼端を採用し、航空機の新たな可能性を切り拓く存在です。

ドバイエアショーで飛んだWH001(N779XW) ©Boeing
試験飛行5機同時展開でテスト飛行は佳境に
2025年8月には、777-9のテスト機5機が同時に飛行試験を行うという、Boeing商用機としては最大規模の試験体制が整いました。WH001による離陸性能試験、WH002では人工氷形状を使った氷結性能検証、WH003はエンジン起動試験、WH004は高温条件下での地上・飛行試験、5号機にあたるWH286は電磁干渉耐性要件への適合性を実証するための試験などのフェーズが進行しており、2026年初納入へ向けて確実な歩みを見せています。

WH002号機 ©Boeing
大量受注・納入ゼロの現状に光明を
現時点でBoeing 777Xは合計551機を受注していますが、まだ納入実績はありません。ローンチ顧客のルフトハンザ航空をはじめ、ANAやカタール航空など多くの顧客が就航を心待ちにしています。これだけの発注残を抱えつつ納入が進んでいない現状は、同機の重要性と同時に課題も示しています。

WH003号機 ©Boeing
エミレーツ航空が最大発注顧客として待望
その中でも最大の発注顧客がエミレーツ航空です。150機超を確定発注し、同社の将来戦略において777Xは不可欠な機材となっています。ドバイを拠点に世界最大級の国際線ネットワークを展開する同社にとって、燃費性能と座席効率、そして長距離性能を備えた777Xの早期導入は喫緊の課題です。

WH004号機 ©Boeing
アメリカ三大キャリアは発注せず、南北アメリカからゼロ
興味深いのは、Boeingはアメリカを代表する航空機メーカーであるにもかかわらず、アメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド航空の三大キャリアを含め南北アメリカの航空会社からは一件の発注もないことです。
北米エアラインは国内線をナローボディ機を中心としながら、欧州や南米の中距離に重きを置いていることから既存の777や787、エアバスA350などを主力としています。中型機以下が中心となるマーケットであり、777Xが欧州・中東・アジア市場を中心に支持される機材であることを浮き彫りにしています。

5号機となるWH286号機 ©Boeing
待望の2026年納入へ、いざ前倒しを
初納入は2026年にルフトハンザ航空へ予定されていますが、試験飛行の進捗と認証次第では2028年頃まで伸びる可能性があることを欧米の航空メディアは伝えています。ANAは国際線長距離メイン路線への投入を心待ちにしていることでしょう。市場全体の復調を考えれば、Boeingが一日も早く777Xをデリバリーすることが航空業界全体の追い風となることは間違いありません。
Boeing社提供動画